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想像をするだけで…。

[ニュースやワイドショーで取り上げられる度に気になって…想像するだけで異常に興奮してくる]

スーツ姿の屈強な大男たちに両腕を掴まれ、厳重に目隠しをされた慎太郎は、かつての居城である東京都庁に連れ込まれたことを確信した。盟主として長らく君臨し続けた伏魔殿の気配を、彼の肌と嗅覚が忘れるはずがなかった。

荒っぽく放り込まれたエレベーターは、かなりの速度で降下しているように感じられた。自身の栄華を象徴する都営大江戸線の鉄路よりも、更に深い何処かへ連行されていることを彼は悟った。「出ろ」と背中を押されて、よろめきながらも慎重に歩を進める慎太郎。いつの間にか彼は、既に目隠しが外されていることに気付けぬほどの暗闇にいた。饐えた空気が鼻腔をつき、彼の瞬きはいつにも増して頻度を上げた。

「これより、百条委員会を始める」。やや震えてはいるが聞き覚えのある声、都議会議長の宣誓であることに疑いはなかった。「ドン、ドン、ドン…」。重厚な和太鼓の音が遠くに響き、天井の高さを慎太郎の鼓膜へ伝える。無数の松明に次々と火が灯され、百条委員会の象徴と噂に聞く百組の金剛力士像が、漆黒の闇に浮かび上がった。見上げるほどに巨大な神々に囲まれた慎太郎は、予ねてからの懸念が現実と化したことを自覚した。悔恨か絶望か、或いは…老いた背中を力なく丸めた彼は、ゆっくりと膝から崩れ落ち、すっかり薄くなった両の掌を床についた。

「コツ、コツ」。冷たいコンクリートを叩く真紅のピンヒールが、僅かに顔を上げた慎太郎の視界に飛び込んだ。深緑の軍服に身を包み、祈祷に臨むシャーマンの如く顔面を白塗りした妙齢の女性。間違いない、現職の東京都知事である。夢枕にまで現れた、この容貌を忘れようものか。深く切れ込んだ胸元に見え隠れする、和彫の牡丹が妖しくも眩しい。

都の紋章が施された、やや大ぶりな軍帽を人差し指で押し上げた都知事は、卑しいものを見るような目で哀れな老人を一瞥した。反射的に視線を逸らした慎太郎に構わず、都知事は独り言のように呟いた。「いよいよ今日という日を迎えました。この百条委員会こそが私のイノベーションであり、そしてレガシーなのであります」。日本人なら日本語を使え、馬鹿野郎…いつもの啖呵を切る覇気は、もはや慎太郎には残されていなかった。

1300万都民の支持を一身に集め、4期14年にも渡って権勢を振るった立志伝中の男が、何故これほどの辱めを受けなければならないのか。敢えて付け加えれば、今は亡き実弟は国民的銀幕スター、自身は社会現象を巻き起こした芥川賞作家である。不世出とまで評された文豪の尊厳を踏みにじる仕打ちが、果たして許されていいものか。思慮を巡らすほどに、老人の脳内は混乱した。

「ビシッ!」。冷徹な都知事が振り下ろした革鞭の炸裂音は、僅かな静寂さえ許そうとしなかった。思わず両腕で頭を抱えた慎太郎は、冷え切った床に顔を埋めた。「手荒い真似はしたくないの。私にだって、敬意というものはあってよ。だけれど、あまりこの子を怒らせないで頂戴ね」。口尻を上げて瞼は動かさず、気高い白蛇を思わせる独特の笑みを浮かべた都知事は、血を吸ってどす黒く染まった革鞭のグリップに軽く口づけした。

謎のベールに包まれてきた伝説の百条委員会、首都東京の中枢で我が世の春を謳歌した慎太郎にとっても、未だ知られざる儀式であった。まさか己の身を以って、その全貌が明らかにされようとは。皺だらけの手の甲に浮かび上がる青白い血道を見下ろしながら、慎太郎はひたすら瞬きを繰り返すのみであった。


[日常]
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