黄金週間の思い出。

そもそも曜日の概念すらないもので、ゴールデンウィークといっても生活はあまり変わらず、集まりや観光でそれらしく過ごした経験は殆どない。

そういえば大学を卒業してアルバイトの日々を過ごしていた頃、連休を利用したオフィスの移転作業に参加したことがあった。現場は麻布十番のビルで、大きなガラス窓に見える東京タワーは、まるで絵画作品のようだった。「こんなことでもなければ、一生縁のない環境だな」と思ったが、20年以上経って振り返っても、まんざら間違った感想ではなかったようだ。社会的なポジションが、あんまり変ってないというかねえ。

確か同じビルの2階から5階への移転で、華奢で経験のない俺は荷造りのみを任された。仕分けを指示するのは、そのオフィスに勤務する女性社員で、20代後半から30代に掛かるかどうか…という程度の年格好。休日出勤ということでジーンズ姿のラフなスタイル、勤務中であれば髪の毛をまとめているのではないかという想像を働かせた。

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「まだ5月なのに暑いわね。早く終わらせちゃいましょうね」という彼女の言葉は、明らかにこちらを年下と判断した口調だった。実際その日は汗ばむほどの陽気で、ムチッとした彼女が身に付ける白いTシャツは適度にしっとりしているように思えて、何ともいえない色気を醸し出していた。作業中に「えーと、このファイルはここね」と声がしたので顔を上げると、かがんだ彼女の胸の谷間が目に入った。「こんなにいい仕事があっていいものだろうか」と、若い俺は運命に感謝した(このくらいしかいいことなかったんだよね、当時)。

少し鼻に掛かった気だるそうな声で「そう、それをここに入れて…そう、そこ」「それ、入るかしら? …あ、入った」「上手ねえ…本当に初めて?」などと声を掛けられる度に、こちらの興奮は人知れず最高潮に達しようとしていた。いやあ、若い俺には玉乱ものがあったねえ。

「敷居が高い雰囲気だけれど、会社では密かに人気があるんだろうな。何かと上司に誘われたり、新人に視姦されたり…」と不謹慎な想像を働かせていたら、彼女はおもむろに固定電話を手に取り、会社の回線を使って通話を始めた。10秒も盗み聞きすれば、相手がイイ男だということは分かる。「そうなの、休日出勤。信じらんないでしょ…うん、多分2時には終わるから。分かった、そっちまでタクシーで向かうね」。

俺は2時まで、黙々と作業を続けた。

ゴールデンウィークの思い出といっても、まあ、こんなもんですよ。生まれ変わったら、人並みに華のある暮らしをしてみたい。


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