葛西純選手と行くオーストラリア その1。

昨年末、来日していたオーストラリアのマッドドッグ選手から、自身の主戦場であるBCW(Battle Championship Wrestling Pty Ltd)という団体で葛西純選手とデスマッチで闘いたいという相談を受けた。デスマッチのカリスマである葛西選手との対戦を希望するファイターは世界中に数多く存在するが、マッドドッグ選手とBCWはかなり具体的な招聘プランを提示してきた。彼らの本気と誠意を受け入れた葛西選手は4月の渡豪を快諾、海を越えての「犬猿」初対決が正式に決定した。で、この機会にとばかりに自分もちゃっかりついて行ったので、この貴重な体験を可能な限り書き残しておきたい。


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↑というわけで、4月27日11時30分羽田発の便でメルボルンに向けて出発。乗り継ぎまでのJAL便で、わざわざ「笑点」を鑑賞する葛西選手。「自分、意外と好きなんですよね」…ええ、僕もです。日本人は大抵好きですね、この番組。

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↑7時間以上お空に浮いて辿り着いたのは、赤道にほど近いシンガポールはチャンギ空港。「現地の気温は摂氏29度」という機内アナウンスに、ふたり声を揃えて「29度!」。飛行機を降りた瞬間のムワッとくる熱気、人々のエスニックな服装、容姿に異国情緒が漂う。世界有数の巨大ハブ空港として知られているが、1時間程度の滞在ではトイレへ行くのがせいぜいというところだった。ちなみに免税店でシンガポールケインは売られていなかった模様。

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↑シンガポールからメルボルンまでは、「世界一安全な航空会社」として知られるカンタス航空の便に搭乗。これまた7時間以上も座りっぱなしということで、機内モニターで麻雀でもやらないと間が持たない。おそらくオーストラリアのゲーム会社が作ったもので、シャンポン待ちの出上がりが対々和三暗刻ではなく四暗刻扱いになったりと、所々とんでもない出来栄えだった(麻雀をやらない方にはサッパリ意味不明でしょうが)。役満なのに他の役やドラまで並べて21翻などと表示されるから、振り込んだ方は余計に気分が萎える。まあ、点数は役満止まりだけどね。

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↑出発翌日となる4月28日の早朝5時にメルボルン到着(日本との時差は1時間)、現地スタッフの自宅ゲストルームになだれ込んで爆睡。そして昼頃に起床して試合会場へ移動という、なかなかタイトなスケジュール。BCWのイベントが開催されたのはホワイトホースクラブという建物で、待機用に当てられた部屋に描きかけの油絵が置かれていたところを見ると、市民向けのカルチャーセンターなどにも利用されているようだ。

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↑日本を訪ねてくるオーストラリアのプロレス関係者はかなり多く、初めて行く国なのに会場には20名くらいの友人、知人が集まっていた。左から全日本プロレス、ドラゴンゲート等で試合を裁いた元レフェリーのダニエル・バーモント氏、井上京子選手との激闘が今も記憶に新しいビクシン選手、地下プロレスEXITに参戦経験のあるクリス・トランス選手…異国の地で馴染み深い面々に会うと心から安心するが、それにしてもクリスのTシャツの柄はどう見ても穏やかならないものがある。

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↑予定の19時を30分ほど押して、いよいよイベント開始。会場内のバーは大賑わいで、すっかり出来上がった観客のノリは凄まじいばかり。この日は葛西選手初登場の他に、BCWヘビー級王座を争うトーナメントも目玉となっており、日本での試合経験もあるガブリエル・ウルフ選手が第2試合にエントリー。スープレックスを得意とする本格派だが、現在はヒールとして闘っているようで、熱狂的な観客たちの憎悪を煽りまくっていた。相撲部屋の稽古を一緒に見学したことを思い出すなあ。

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↑日本の興行同様、お笑い風味の試合もラインナップされていた。言葉は分からなくとも、体の動きで十分笑えるのがプロレスの強み。これまた来日経験のある左のクリータス選手は、街中で見かけそうな体格と薄毛っぷりながら、高角度の回転エビ固めをスルリと決めたりするテクニシャンである。

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↑辛子色のシャツを着たヤサ男は、フレディ・ゴールド氏なる悪党マネージャー。試合前は会場の隅でポツンとして誰とも語らず、葛西選手と「本当にイヤな奴なのではないか?」という話になった。この日は大物の刺客を呼んだとのことで、登場したのは元WWEスーパースターのオーランド・ジョーダン選手。ゴング直後の派手な殴り合いは期待を抱かせたが、それから2分程度で唐突に試合終了。バックステージにいた葛西選手も驚いたようで、大会終了後に「フィニッシュ、何でした?」と尋ねられたが、それが思い出せないほどアッサリした内容だった。ベタにも程があるが、実際ジョーダンみたいな試合だったよ。

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↑休憩明け(セミ前)には女子の試合も。小柄で愛らしいルックスのイジー・ショウ選手がヒール、セクシーでややケバケバしいアベリー選手がベビーフェイスという構図は意外だった。そこに至る伏線、ストーリーがあるのだろうが、何をやっても観客からブーイングを返されるイジー選手の小悪魔っぷりは見事なものがあった。

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↑王座争奪戦の決勝に進出したパンク系怪奇キャラのシド・パーカー選手は、線は細いながらも身体能力は抜群。無茶な姿勢から飛び上がってミスト(毒霧)を噴射したりと、リング上で縦横無尽に躍動していた。今夏には海外の大物との一戦も決定しているとのことで、日本のファン、関係者の皆さんも要チェックの存在かもしれない。

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↑大会のオープニング、休憩明けにクイーンの「I Want to Break Free」が流れると、観客たちが一斉に歓声を挙げて手拍子を始める。それは名物リングアナウンサー、バス氏の登場を歓迎する「お約束」らしい。彼の容姿がフレディ・マーキュリー似だからこその演出だと思われるが、こちらのバス氏も来日経験があり自分も幾度か酒を酌み交わした仲だ。「フレディに似てるね」と言ったらまんざらでもない様子だったことを思い出すが、実際現地でもそういった評判なのだろう。気品のあるアナウンスは、間違いなく大会の格式向上に貢献していた。


さあ、いよいよメインエベント…というところで、今回はここまで(ここからがまた気合の必要なところでして)。オーストラリアの観客はとにかく熱狂的だが、それでいて品が悪いわけではなく、危なっかしい雰囲気は皆無。ハッキリいって、物凄く居心地のいい空間だった。オージー諸氏と知り合った十数年前、頂戴したDVDで観た試合は正直いって素人目にも発展途上の段階だったが、今回初めて現地で観戦して確実にレベルアップしていることが分かった。どの試合にも個性があって、新鮮味を差し引いても退屈することがない。日本でも見たい選手が幾人かいたし、オーストラリアのプロレスが今後注目されることを個人的にも願っている。セミファイナルまで観たところで、しっかりハッピーな気分になりましたよ。

というわけで、次回に続く!


[プロレス、格闘技][イベント]
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葛西純選手と行くオーストラリア その2。

前回のあらすじ…前回をご覧ください。

実はこの日のメルボルンは興行戦争状態で、BCW以外にもふたつの団体が大会を開催していた。内ひとつはビッグマッチとのことでBCWの観客動員が不安視されていたのだが、蓋を開けてみれば葛西選手への期待感(怖いもの見たさ)もあって場内は超満員状態。とはいえオーストラリアにおいてハードコア及びデスマッチの試合は稀で、スタイルの実際を理解しているのはそれなりのマニアに限られると聞く。蛍光灯の使用が許される会場が殆どないらしく、ハードコア志向のマッドドッグ選手はアメリカから招聘した元WWE選手とラダーマッチで闘ったりしたそうだが、相手の方がハシゴの高さに慎重になりすぎて(?)、何とも締まりのない試合になってしまったとのこと。そんなハードコア発展途上の地に登場するクレイジーモンキーは、オーストラリアのレスリングファンたちにどのように迎えられるのだろうか。


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↑試合に先駆けて、東京で撮影された葛西選手の予告VTRが流される。専門のスタッフによる映像や照明などの演出は割と派手で、場内の雰囲気をかなり華やかにしていた。BCW、お金かけてます。

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↑地元のハードコアヒーローであるマッドドッグ選手は、ヒステリックとも思える熱狂的な歓声に迎えられて堂々入場。現地に行かねばわからないことで、「こんなに人気があるんだ!」というのが実は正直な感想だった。もちろん、選手本人は気合十分、今にも鼻血を吹き出しそうなハイプっぷり。

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↑クレイジーモンキー、オーストラリア初見参。耳に馴染んだ「Devil」が驚くほど新鮮に、そして異常にカッコよく聞こえてくる(涙モンですよ、実際)。「カッサイ、カッサイ!」の合いの手がないことは予想していたが、全く想定外だったのは葛西選手へのブーイング。熱心なオージーたちは、日本からやってきたデスマッチアイコンを外敵と認識していた。いやあ、これはこれで面白いことになりそうだぞ。

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↑Ultraviolent Rules Matchと銘打たれた一戦、序盤の展開は手足を取り合うグラウンドの攻防。嵐の前の静けさといった趣で、地元のファンたちは「これがマッドドッグのやり方だよな」と囁きあっていた。ブーイングを耳にしてヒールを決め込んだのか、葛西選手は客席に向かってこの態度。外国へ行って中指立てて帰ってくる商売は、まあ、そうはないでしょう。

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↑BCWのリングには日本のメジャー団体のような場外フェンスが設置されており、観客席になだれ込んでの場外乱闘は滅多に見られないものらしい(かつてのフェンスアウトのような悪法はない模様)。もちろんハードコアな両雄にとっては、そんなものお構いなし。売店やバーが置かれたスペースで流血戦が展開されたが、選手たちが場外フェンスを越えただけでどよめく観客たちの反応が、これまた新鮮だった。

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↑試合開始前に自らばらまいた画鋲の海へ、高速のジャーマンスープレックスで放り込まれるマッドドッグ選手。してやったりの葛西選手は、この表情。場内には「Let's go Maddog!」「Crazy Monkey!」のチャントが交互に響き渡る。いやあ、マッドドッグ選手、なかなかの受けっぷりである。

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↑コーナーでの殴り合いからトップロープを制したマッドドッグ選手だが、機転を利かした葛西選手のデッドリードライブで場外の有刺鉄線ボードへ叩きつけられてしまった。試合前に確認した現地の有刺鉄線は針が長めで、先端はかなり鋭い。ボードはブ厚く、真っ二つになった際の音は凄まじいものがあった。大興奮の観客は、もちろん「Holly shit!」の大合唱である。

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↑何事もスケールの大きいオーストラリアだが、この会場の天井だけは何故か低く、葛西選手が持ち込んだラダーは場外に設置されることに。ダイブを狙う葛西選手に、猛然と襲い掛かるマッドドッグ選手…まさに樹上の猿と、それを追う犬の争いを思わせる光景である。この状態から雪崩式ブレンバスターを決めたマッドドッグ選手は、試合のペースを徐々に握っていく。

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↑どこからか取り出したオイルを画鋲ボックスにぶちまけたマッドドッグ選手は、全く躊躇なくライターで着火。何を狙うのか自分の脚にもオイルを垂らし始めたが、そんなマッドドッグ選手に主導権を握らせまいと葛西選手は先手を仕掛ける。ロープワークの最中に右脚を燃やすことに成功したマッドドッグ選手は、そのままフライングニールキック一閃。この巨体で見事な跳躍力、フォームである。右脚へさらにオイルを補充したマッドドッグ選手は、コーナーからレッグドロップまで敢行。昨今の葛西選手の試合で火が使われた場面は、全くといっていいほど記憶にない。非常にレアで絵になる攻防だった。

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↑おー、いよいよ蛍光灯の登場である。うつ伏せにダウンしたマッドドッグ選手に蛍光灯の束を重ねた葛西選手は、得意のパールハーバースプラッシュ。凄まじい破裂音が響いたが、カウントは2…えっ、決まらないんだ!? 総立ちの観客たちは、もはや何が何だかわからない状態で叫び続けている。

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↑ついには竹串まで投入した葛西選手。まさに狂猿そのものの表情で、スキンヘッドの頭頂部にバンバンと叩き込む。トランス状態の観客とクレイジーモンキー、そしてマッドドッグが完全に一体となって、何とも形容しがたい独特の空間が出来上がっていた(二人とも目が飛んでるもんなあ)。いやもう、楽しいのなんのって。

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↑蛍光灯ボードに巨体のマッドドッグ選手を叩き落とした葛西選手は、この日2発目のパールハーバースプラッシュ。タフな狂犬もいよいよ力尽き、葛西選手が見事に3カウントを奪取した。此の期に及んでも葛西選手へブーイングを浴びせる地元ファンの熱さに、大いに感動。もちろん会場には熱狂的な葛西フリークたちも押しかけており、耳をつんざくような歓声が途切れることはなかった。

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↑敗れはしたものの、勝負でも過激度でも世界のクレイジーモンキーに肉薄したマッドドッグ選手、彼のデスマッチを是非日本でも観てみたいものだ(過去に大日本プロレスに参戦、横浜文体の2階からダイブしたことを覚えている方もおられるだろう)。試合後に伺った葛西選手のマッドドッグ評はかなり高く、竹田選手や佐々木貴選手、マンモス選手とも手が合うのではないかとのこと。また葛西選手自身も再戦にはやぶさかでない様子で、マッドドッグ選手をめぐる今後の展開に期待を抱かせる一戦だった。

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↑試合後は血だらけのまま売店へ直行、ジャパニーズ・デスマッチをとことん体現する葛西選手にファンたちは大喜び。シドニーから7時間もドライブして駆けつけたファンもいて、グッズ売り場は後楽園ホールにも劣らぬ熱気に満ちていた。この日販売された対戦記念Tシャツも含めて、2枚の画像に写っているTシャツは当方デザインのもの。我ながらちゃっかりしたセレクションである。

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↑葛西選手がとりわけ感動していたのが、こちらのサインボード。最前列に陣取ったファンが場外フェンスに貼り付けていたもので、もちろん葛西選手は快くサインをプレゼント。もう1枚の写真、こちらのおばあさんは関係者にも知られた名物ファンで、レスラーから貰ったサインを腕に彫ってしまうというツワモノ。「これがロブ・ヴァンダム、これがシェーン・ダグラス、これはゲーリー・ハートね」と嬉しそうに刺青を指差して教えてくれた。ジュン・カサイのオートグラフも、近々彼女の腕に刻まれるのだろうか。

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↑オーランド・ジョーダン選手に記念撮影をお願いした葛西選手。まさに海外ならではの組み合わせだ。流石は元WWEスーパースターのジョーダン選手、風格、サイズ、清潔感と全てを兼ね備えているが、まあ、正直なところ、この日一番働いた人と、そうでない人との2ショットでもある(←おいおい)。

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↑数年来の友人であるマッドドッグ選手の激闘をねぎらう。画鋲、有刺鉄線、竹串、蛍光灯を食らい、脚には火傷を負い、まさに満身創痍の狂犬だったが、その表情と言葉には充実感と達成感が表れていた。リング上では怖いもの知らずの乱暴者だが、素顔は理性的なナイスガイ。何度でも言いたいが、ぜひとも後楽園ホールで彼のデスマッチを拝みたいものである。

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↑折角なので、こんなショットも。決勝トーナメントを勝ち抜き、見事BCW初代ヘビー級王者となったスレイド・マーサー選手、聞けば日本のランズエンドで「ツリーマン」として闘ったことがあるとのこと。えーと、あなたが巨木フトシさんですか! 物凄く真面目な人物で、受け答えは「ハイ、ハイ!」。ベルトという箔をつけての再来日に期待したい。青い髪の毛の女性は、トーナメント決勝で敗れたシド・パーカー選手のマネージャー、エリカ・レイド嬢。浅黒い肌と独特のペイントから察せられる通り、アボリジニ(オーストラリアの先住民族)の血を引いているという。リング上では怪しげな悪女だが、SNSでは日常の可愛らしい素顔を披露している。彼女に限らず会場で出会った女子選手は総じて美しく、わざわざ海を渡ってきた甲斐があったと大いに感動させて頂いた。それにしても俺は弱そうだなあ。

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↑大会終了後はメルボルンに戻り、バーでささやかな打ち上げ。ご自身のブログでも書かれているように、離日前から帯状疱疹を患い、抗生物質を服用していた葛西選手はコーラで乾杯。こちらはちゃっかり地ビールを味わって…いやはや、どうもすみません! ちなみに当方デザインの対戦記念Tシャツはほぼ完売状態で、本当に嬉しい限り。Thank you so much!


とにかく贅沢過ぎるデスマッチだった。試合が終わってすぐに葛西、マッドドッグ両選手にそれぞれ伝えたのは「日本のファンがこの試合の内容を知ったら、確実にジェラシーを覚えますよ!」ということ。個人的には初代タイガーマスクのMSG初登場を思い出した。予備知識を持たないアメリカのファンに向けて、持てる全てを発揮して蔵前のデビュー戦同様のインパクトを残したタイガーの姿が、オーストラリアで躍動する葛西選手にオーバーラップした。そしてマッドドッグ選手の奮闘ぶりは、まさに賞賛に値する。葛西戦へ向けて高まったモチベーションが一気に爆発した格好で、彼自身にとってもベストバウトだったのではないだろうか。退場する彼の目に光るものがあったように見えたのは、決して錯覚ではなかったはずだ(まさか傷が痛いだけだったなんてことはないだろう…まさか)。

16時間も飛行機に乗ってきた甲斐があったと、この貴重な機会に本当に感謝している。DVDを取り寄せられるならもう一度観てみたいし、日本の皆さんにも是非ご覧頂きたい。国内では見られない海外ならではの珍しい攻防もあり、葛西フリークの皆さんにとって非常に興味深い一戦だろう。そして何より葛西純がヒールになったという現象が、最高にレア。日本はもちろん、アメリカでもドイツでも絶対的なカリスマとして崇められてきた葛西選手にとって、今回の遠征は極めて貴重なシチュエーションだった。DVDが発売されたら、絶対に購入するべきですぞ!

さて次回は、メルボルン観光の様子をご紹介。「世界で最も住みやすい街」と評されるメルボルン、果たしてその実態は…?

次回に続く!


[Tシャツ][イラスト、デザイン][プロレス、格闘技][イベント]

葛西純選手と行くオーストラリア その3。

前回のあらすじ…前回をご覧ください。

「4・28ホワイトホース決戦」にてマッドドッグ選手との激闘を制した葛西純選手は、その翌日たった1日のオフを利用してメルボルン観光へ出向いた。ビクトリア州の州都であるメルボルン市は、イギリスの雑誌「エコノミスト」が調査した「世界で最も住みやすい都市」ランキングで6年連続第1位に選ばれている。世界一危険な男が世界一安全(?)な街を歩きまわるシチュエーションはなかなか興味深いものがあるが、実際に訪れてみたメルボルンは想像以上に魅力的な街だった。


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↑現地スタッフ宅で頂戴した、オーストラリアならではの朝食。葛西選手が箸で摘まみ上げている白い肉はクロコダイル、皿に乗った赤身はカンガルーである。特にゲテモノ料理という扱いではないようで、現地の皆さんも当たり前のように口にしていた。「どちらも脂肪が少なくて、いい肉ですね」と、葛西選手はアスリートならではの感想。

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↑我々が向かったのは、世界的にも有名なメルボルン動物園。土曜日ということで混雑を予想したが、施設そのものが非常に広大で窮屈さを全く感じなかった。仲間意識がそうさせるのか、クモザルを見つめる葛西選手の笑顔は実に優しい。

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↑デスマッチTシャツのデザインで当方も随分と頭蓋骨を描いてきたが、類人猿のそれは牙が鋭くてかなりの迫力である。負けじと凄んでみせる葛西選手…いやあ、日本産のクレイジーモンキーの方がやっぱり恐ろしいわ。

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↑自然環境を再現した飼育エリアの中に、何故か観光客たちの姿が。女性スタッフがマイクを片手に実況しており、何らかのイベントであることが分かる。しばらくすると人間たちは檻の中に隔離され、入れ替わりで飛び出してきたのは巨大なスマトラタイガー。人間たちが残した匂いに興奮した猛獣は、唸り声をあげながら方々をグルグル徘徊する。「葛西さん、こうやってトラの動きを見せるアトラクションみたいですね」「うーん、毎日同じようなことをさせられても、やっぱり気になるんですかね」「トラなりに『今日こそは何かにありつけるかもしれん』って思うんですかねえ」「うーん…」。

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↑アジアゾウの飼育エリアはかなり広く、繁殖が行われているのか子供が何頭もいた。じゃれあったり喧嘩をしたり、眺めているだけで本当に楽しい。土地の広さがあってこそだが、間違いなく10頭以上は飼育されているようだった。流石はオーストラリア、スケールが桁違いである。

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↑有袋類などの固有種が数多く生息するオーストラリア、その代表格といえる存在がコアラだろう。樹木にしがみついているイメージが強い彼らだが、睡眠時にはこうして丸まってしまうものらしい。この状態では何だか別の生き物のように見える。「『コアラのマーチ』のコアラは茶色いけど、実際は地味な灰色なんですね。思っていたより、可愛くないですね」…クレイジーモンキーのコアラ評は、かくも厳しいものであった。

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↑動物園見学を終えて、ウーバーと呼ばれる自家用車タクシーを待つ葛西選手。日本でいえば白タクということになるが、オーストラリアでは州により合法である。一般のタクシーに比較して安価なので、地元の皆さんに重宝されているようだ。実際に乗ってみるとドライバーはやはり素人っぽく、道を間違える度に反対車線へUターンしたりと、デスマッチファイターでさえ仰天するような運転を見せてくれた。

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↑観光名所として名高いフリンダース・ストリート駅前で、いかにも観光客然とした記念撮影。エドワード王朝風の荘厳な駅舎は、歴史的建造物に認定されたメルボルンの玄関口である。暗くなってからもう一度訪れてみたら、全体がライトアップされて一段と美しくなっていた。あまりにも見とれてしまって、まともな写真を撮れなかったことをお許しください。

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↑駅前の商店街(って書くと、ちょっと色気がないなあ)を少々巡って、駅前のバーで一休み。ここでも葛西選手はコーラで乾杯。本当にすみません。今回方々で飲んだオーストラリアのビールは、同行者の好みだったのかフルーティーな味付けのものが多かった。一方で、かなり穀物感の強い銘柄もあり(もはやビールとは思えない風味)、比較をすると日本のビールはコクやキレに特徴があるように感じた。酒が入れば当然トイレが近くなるものだが、あちらの小便器は総じて位置が高く、小柄な自分は爪先立ちをしないと縁にモノが乗っかってしまいそうだった(実はそれが正しい使い方だというヤケクソな説も)。こんな所でも、スケールの違いを実感させられるとは…。

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↑BCWのオーナー、マシュー・フィードノース氏(葛西選手の奥にいるヒゲの人物)にご招待頂き、ステーキハウスでディナータイム。弁護士でもあるオーナーはレスラー顔負けの体格と風格の持ち主だが、会場ではビシッとスーツを決めて微笑みを絶やさぬ紳士だった。食の細い俺は200グラムのステーキを所望。拳のようにブ厚いオージービーフは、思ったよりも柔らかくて非常に美味だった(パンではなくて、ご飯が欲しくなったよ)。付け合わせのボリュームも凄まじく、大皿になみなみと盛られたフライドポテトが注文した人数分運ばれてくる。オーナーはそれを追加注文するのだから、大物はモノの食い方も違うというか。

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↑元レスリング雑誌のライター、友人のマーティンに案内されてストリートアートの名所へ。近くに美術系の学校があるこの一帯は、路地や建物の壁に自由に作品を描くことが許されている。才能と労力が感じられる力作から落書き程度のものまで、様々なグラフィックが我々の目を楽しませてくれる。次々と上描きされるので個々の作品の寿命は短く、訪れる度に変化する風景が味わい深いという。我が国の状況を振り返ると、非常に羨ましい環境といえるだろう。サル・ザ・マンの血が騒いだのか、葛西選手は目を輝かせて写真を撮りまくっていた。

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↑ルチャ・リブレ風の装飾を施したメキシコ料理店。有名な「死者の日」(日本のお盆に相当する行事)に飾られる切り絵、パペルピカドが店内の窓際に吊り下げられている。最新版のビオレント・ジャックTシャツのバックプリントに、選手ご本人をモデルにしたパペルピカドを描いたので、会場等で目にする機会があればご確認頂きたい。

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↑夜が更けても、フリンダース・ストリート駅前は賑やかだ。街ですれ違う人種は多種多様で、我々のようなアジア系はかなり多く、ニカブで顔を隠したムスリムの女性も度々目にした。平和で豊かに見えるメルボルンのシティ(中心部)にもホームレスがいるのだが、空き缶を手にセントポール大聖堂周辺を右往左往する彼らは見るからに活発で、葛西選手と「まともに働けそうだけどなあ」という話になった。寿司屋のショーウインドーを目にして仰け反る我々にニヤリとするマーティン…来日経験を持つ彼は、本場の寿司をよく知っている。アメリカのSushiもそうだったけれど、両端から突き出すほどでっかいフライを巻いていたり、独創的にも程があるんだよなあ。

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↑いきなり一夜が明けて、いよいよ帰国の途に。何もやましいことのない我々は悠然と出国手続きの順番を待っていたのだが、「ハーイ、オハヨウゴザイマス」とえらく調子のいい係員に誘導されて、何故か列から離れた場所で身体検査を受けることに。散々我々の身体を弄った係員は、葛西選手に向かって「You look like yakuza」。ジャパニーズ2名は堪えきれず大笑い。「修羅場を潜ってきた凄みが、どうしても滲み出るんですかねえ」「いやあ、自分では普通だと思ってるんですけどね」「いや、まあ…普通じゃないでしょう、どう見ても」「うーん、まあ、そうかなあ。そうかもしれないですねえ…」。

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↑出国エリアに入ってから小銭を使い切ることを思い出し、自販機で購入したLIFTなる清涼飲料水(2.5ドル=およそ210円)。レモンの風味も炭酸も強くて、かなり自分の好みだった。帰国してから調べたところ、意外にも日本語版ウィキペディアの記載があり、かつては地域限定で国内販売されていた事実が発覚。現在はオーストラリアのみで流通しているそうだが、この機会にもう2、3本買ってくればよかったな。

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↑次第に遠くなっていくオーストラリアの大地に想いを馳せる葛西選手(寝ているだけという説も)。カンタス航空のCAは男性が殆どと聞いていたが、我々が乗った便は女性スタッフの方が多かった。通路を塞がんばかりの彼女たちの巨尻は「スラムで上がらないんじゃないですかね」とクレイジーモンキーを警戒させるほどの迫力。そんなCAたちが運んできてくれる機内食はなかなか美味で、行きも帰りも出されたものは綺麗さっぱり平らげてしまった。帰国してから計ったら、体重増えてたもんな。

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↑あっという間に(でもないが)成田到着。帰路は乗り継ぎのない直行便で、約10時間の搭乗。往路で慣れちゃったもんだから、ぜーんぜんへっちゃらさ(半荘何十回やったか分からないが)。「短い日程だったけど、凄く充実していましたね」という葛西選手の言葉は間違いなく本音であっただろう。2泊4日という強行日程ながら、可能な限りオーストラリアを堪能されたのではないだろうか。


南国が故なのか、オーストラリアの印象はモモのようなイチゴのような、そんなフルーティーな香りに象徴されていた。前述のビールしかり、飲食物も空気も人々の雰囲気も、何もかもがスッキリと優しい甘味を帯びていたような気がする。実は20年前のメルボルンは、方々でストリートファイトが展開される物騒な街だったそうだ。健全化を図ったフリンダース・ストリート駅前のバーでは、新しいオーナーが荒れた内装をリフォームしたりと浄化活動を進めたので、ここ数年は店内も周辺も随分と穏やかになったという。喧嘩の原因は、その多くが経済格差によるもので「ケッ、金持ちが威張りやがって!」「何を、この貧乏人が!」といった流れで毎晩のようにゴングが鳴っていたそうだが、今ではみんなで仲良く飲むのが当たり前になったとのこと。そういった変化を経ての「世界で最も住みやすい都市」という評価なのだろうが、一方で物価は日本人から見てもやや高い。土産に持ち帰ろうと375mlのビールを2パック(12本)買ったら、それだけで4000円くらいになった。商品によっては我が国よりもひと回り高価なので、しっかり計算をしながら買い物をしないとえらいことになってしまう。もっとも現地の平均賃金は比較的高額らしく、働けばそれだけお金になるという話だったから、今後も理想的な都市という評価を受け続ける可能性は高いかもしれない。

こうして振り返ってみても、実に有意義で楽しい旅だった。最初に相談を持ちかけてくれたマッドドッグ選手、自分のような者まで歓迎してくれたBCWのマシュー・フィードノース氏、スタッフにレスラー諸氏、親切な友人たち、そして一生忘れられないであろう貴重な機会を与えてくださった葛西純選手…いくら感謝してもしきれないという気はするが、全ての皆さんに最大級のお礼を申し上げたい。

Thank you very much, I love you all, Australia!!


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