1月31日。

新日本プロレスが全株式売却とのニュースは、まあ、やはり衝撃的だった。新オーナーとなるブシロードという企業の名称には聞き覚えがある。テレビのCMでやたら耳にしていたこともあるが、複数のプロレス団体のスポンサーになったり、興行そのものを主催したりしていたので、「売り物はオタクっぽいけど、何の会社なのかなあ」くらいの意識は持っていた。

そういえば社長の姿を目にしたこともある。ゼロワンで組まれた「ブシロード提供試合」で、社長自ら悪役マネージャーを演じていたのは、去年の暮れ頃だったかと思う。ルックスもセリフ回しも失礼ながら素人丸出しだったが、その部分に開き直ってややスネてみたりするのが何処か可愛らしく、緩ーい空気を漂わせつつ会場ファンは好意的にブーイングを送って付き合っていた。

だからまあ、本当にプロレスを好きな人が、プロレスを買い取ったということなのだろう。調べてみたらトレーディングカードやビデオゲームを製作、販売する会社のようだが、この御時勢でプロレスにお金を出してくれるというだけで十分有り難い存在ではある。「ストロングスタイルが、オタク資本になっちゃうのか」というこだわりがないこともないが、その辺りのさじ加減は社長の「プロレスマニア度」に期待するべきだろう。何でも諦めるのは、そろそろもうキリがない。

そんな業界再編成構想が露見した1月31日が、あのジャイアント馬場の命日であったとは、これは偶然……だろうな、やっぱり。

1999年のあの頃、俺はネクタイを締めて某企業で借金取りの仕事をしていた(つまり、イラストレーターではなかった)。夕方の3時頃だったか、仕事机の電話が鳴って、取ってみると妻からだった。そこで俺は、初めて馬場の訃報を知った。仕事中の私用電話にも関わらず、俺はオフィス中に聞こえる声で「大変だ、馬場が死んでしまった…!」と叫んで、思わず椅子から立ち上がったのだった。

会社の同僚、上司たちは、俺がプロレスファンであることをよく理解していた。だからなのか、お咎めは一切なかった。「馬場って、あの馬場? 死んじゃったの?」「はい、入院先の病院で…闘病中だったなんて知りませんでしたよ!」。

その日は上司に誘われて、仕事帰りに麻雀を打った。しかし頭の中は馬場のことしかなかったので、全く勝負に身が入らない。「小沢君、今日は麻雀どころじゃなさそうだね。でも勝負だから情けは掛けないよ」…結果は、当然のように惨敗だった。

帰宅して、ビールを飲みながらしみじみ馬場のことを考えた。「もう、あの人のインタビューは読めないのか」と口にしたら、急に涙が溢れてきてどうにもならなくなった。「まさか、馬場で泣く日が来るとは」と思うと、余計に胸が締め付けられる。ああ、本当に死んじゃったんだなあ。

ジャイアント馬場 イラスト

ここまで読むと物凄い馬場ファンだったように思われるかもしれないが、小学校入学時からプロレスファンになった俺は、当時から今に至るまで完全な猪木派である。古いことを知っていれば偉いというわけではないが、かつての馬場×猪木という対立構図は、今のファンには恐らく想像が出来ないほどシリアスなものだった。

俺がテレビでプロレスを観始めた1980年前後、馬場はぎりぎりメインエベンターではあったが、その説得力には大きく陰りが出ていた。年齢による衰えは如何ともし難く、猪木派の言い分は「馬場なんかがトップにいるから、プロレスが胡散臭く見られるんだ」というものでほぼ一致していた(まあ、猪木&新間の過激コンビが、実際にそういった挑発的な発言を繰り返していたのだが)。

幼い俺もそういった感情を持っていて、テレビで馬場vsドリーを観ている母親が「ほら、馬場が横になっても、絶対に3カウント入らないでしょう?」と呆れ顔になっているのを悔しく思っていた。その無念は「馬場も真剣にやっている」とは子供心にも信じられぬ、幼き猪木信者の正直な心境であった。

80年代半ばになって第一線から退いた馬場だが、87年頃までは会場でのヤジも辛辣なものがあったように記憶している。「馬場、動け!」とか「この年寄り!」といった心ない罵声を、東洋の巨人は大きな背中でゆっくりと吸収していた。当時の馬場の心中は、とても想像が及ぶものではない。

それがいつの頃からか「馬場って最近、面白いよな?」という雰囲気に変わってきたから世の中分からない。嘲笑の対象だったブッチャーとの超ベテラン対決が「人間国宝プロレス」ともてはやされるようになり、幾らか柔軟になったファンたちの楽しみのひとつになっていたのだ。

猪木派の俺も、リング上の好々爺となった馬場の試合を、心から好意的に観るようになっていた。還暦近い2メートル超の日本人が、「黒い呪術師」の地獄突きでバーンと受け身を取るのである。そりゃあね、それだけでカネが取れるってもんですよ。

多くのプロレスファンが、馬場を「馬場さん」と呼ぶようになったのは、馬場×猪木の対立構図が穏やかになっていたことを間接的に証明していた。そして我々は、自らのファン歴を改めて振り返るのだった。

猪木ファンは馬場のこともよく知っていた。そして、馬場ファンも猪木のことをよく知っていた。

もし俺が日本プロレス時代の「強い馬場」「明らかに猪木より格上の馬場」を知っていたら、こういった心理は更に複雑になっていただろう。だからまあ、馬場と猪木が対立していたからこそ、プロレスは面白かったということである。勝負という勝負、全てに勝ち負けを決める必要はない。ユニークな時代だったよね。

話を現在に戻して…新オーナーのブシロードが、ゴールデンタイムの中継枠を買ってきたりしたら、そりゃ業界の救世主降臨どころの騒ぎじゃ済まないよな。まあ、夢のような話だけどね。野次馬の立場をいいことに、そのくらいの淡い期待は抱かせて頂きますよ。


[イラスト、デザイン][プロレス、格闘技]
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あっ…ぺよんさん?

昨日開催されたゼロワン後楽園ホール大会の第一試合、ハッスルMAN'Sワールド「世界の強豪シリーズ」に韓国からの刺客が登場。会場に『冬ソナ』の例の曲が流れたところで「あの人が出てきたら面白いんだけどなあ」と軽く妄想したら…

ぺよん潤

あっ、本物の偽ヨン様…の本物だ。って、なんだか分かりにくいが、キム&ウォンピンを先導してリングインしたのは、当ブログでも何度かお名前を出させて頂いたぺよん潤さんであった。

で、こちらの偽ヨン様、スプレーで雪を舞わせつつ相手チームに散々微笑みかけて、特に試合に介入することもなくゴング前に撤収。「やることはやった」という充実感が、リングを後にするその背中に…漂ってたかなあ?

休憩時間、客席にぺよんさんを発見。ゼロワン出場に至るまでの経緯を伺って大笑い。ちなみにスプレーは自前とのこと。流石のセッティングです。

そんなぺよんさんの登場には驚いたが、妙に堂々として器用に動き回る二人の韓流レスラーにもプチ衝撃。勉強不足故に存じ上げないが、彼らはこれまでに試合の経験があるのだろうか? いきなりあそこまでは、なかなか出来ないと思うのだが(ウォンピンなんかスワントーンボムの自爆までやってたもんなあ)。

そういえば最近、アントニオ猪木氏が韓国でのプロレス団体旗揚げを示唆していたが、いよいよマット界にも韓流の嵐が吹き荒れる…かなあ?

歌川国芳。

「…アレ、見に行かない?」と春風亭傳枝師匠と互いに誘い合っていた『没後150年 歌川国芳展』に、昨日やっと足を運んできた。何しろ今週末には展示が終わってしまうというから、ここまできたら焦らざるを得ない。夏休みの宿題と一緒で、追い詰められないと動かないんだよね。

会場は森アーツセンターギャラリー。六本木ヒルズ周辺の近代的な建造物、そして見るからにエリート感たっぷりのビジネスマンたちを眺めていると「我々の能力と働きとがあって、お前のようなロクデナシにも能書きをたれる機会が与えられているのだ」と説教されているような気がしてくる。まあ、俺はヘソがぐいーんと曲がってるからさ。

予想通り15分程遅れてきた傳枝師匠と合流、早速チケットカウンターの列に並ぶ。「平日の昼間から、こんなに来るんだね」と驚きを隠せない傳枝師匠。「きっとみんな噺家かヒマな絵描きだぜ。そうとしか思えないよ」と的確な返答をしつつ入場券購入。大人1枚1,500円也。

「デヴィッド・ボウイだったら確実に死んでるな」と思わされる高速エレベーターで52階の展示場へ。やはり満員御礼の館内を見渡して「これで土日だったら大変なことになるね」「噺家とヒマな絵描きだけじゃなく、一般の人まで来ちゃうんだもんな」と念を押すような会話。

先ず月岡芳年のファンになった俺は、今回の主役である国芳について「師匠」とか「先生」といったイメージを持っている。時に中性的な印象を感じさせる芳年に比べると、国芳の作品はひたすら男性的で押しが強い。勇ましい武者絵ばかりでなく、個人的には美人画や戯画にも同様の違いがあるように思う。がっちりと男の目線で描いてるというか、何というか。

そういった先入観は抜きにしても、「絵の安定感が凄い」というのがホンモノの国芳作品を目にした第一印象。構図やデッサンが卓越しているのは言うまでもないが、浮世絵の様式美とは違うところで「これが俺の絵だ」という一貫したアピールが感じられる。それは彼特有のサービス精神にも繋がっているのだろうし、何にしても自分のスタイルを持っている人は強い。

迫力満点ながら、その筆致は非常に繊細。版木も数点展示してあるので、神経をすり減らすような職人技の連携を想像しながらご覧頂きたい。絵師だけではなく、彫師や摺師の技術力も実感できるのは展示会ならでは。あんな細かい線ばかり彫ってたら、絶対に寄り目になっちゃうよ。

国芳展としては最大規模とのことで、全10章に及ぶ展示品を見終わるのにしっかり3時間以上も掛かった。それでも全く退屈することはなく、色褪せた年代物の作品を前に終止ゾクゾクするようなロマンを味わった。展示場から出て図録を購入した辺りで、突如足が棒になったような疲労感に襲われたが、まあ、それも気持ちのいい現象ではあった。

国芳展
↑厚さ2.4センチ、人を殴り倒せそうなほど立派な図録は2,500円也。傳枝師匠もしっかり購入。「家に帰って横になりながら、ゆっくり眺めるのが楽しみだ」とニヤついていたが、これだけのボリュームだから読書後は昼寝の枕に使われるかもしれない。まあ、噺家だけに。

素晴らしい作品の数々を堪能して、とにかくやる気が出ました。先人に倣って精進させて頂きます。まあ、たまには、まともなことも言わないとな。


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